2007年に始まった世界金融危機の影響で、モンゴルでは2008年まで高騰をみせていた住宅価格が下落し、建設業が低迷期を迎えたのは周知の通り。しかし2010年後半からは回復がみられ住宅価格が安定し、2011年第1四半期からは市場価格が少々上昇する傾向にあります。
まず、モンゴルの経済成長が加速され、国民の平均所得が上がるにつれて不動産の需要が高まることは確実です。これは住宅価格の上昇につながる実質的な要因となります。(ちなみにモンゴルにおける消費者の購買力が年を追うごとに強まるにつれて、外国在住のモンゴル人の収入の優位性が縮小し、外国でためたお金で母国で不動産を購入する際にあった、比較的有利な立場が失われる可能性があります。)
次に、最近モンゴル政府が住宅ローンの金利を6%まで下げる方針を打ち出したことは、当政策実施期間中の住宅の需要を高め、価格上昇を招くことが考えられます。しかしこの金利6%の政策は、郊外に住む低所得者およびゲルに住む者を対象とし、ゲル地域をアパート地域にしていく政策の一環であるため、市内中心部の好立地のマンションや高級マンションとは無関係ですが、一つの市場である以上、住宅の平均価格に影響を及ぼすに違いありません。一方、政府の「10万世帯のアパート化」プログラムの実施は、住宅の供給を意図的に高めることになり、結果として価格高騰をある程度抑制すると予測されます。
さらに、建築材料の価格上昇および建築の質に関する規則強化、国民の平均所得の向上による人件費の上昇などが住宅価格の上昇を招きます。
住宅価格が地価と関係することは言うまでもありません。ウランバートル市内の地価高騰が収まれば、住宅価格が下がることが期待されます。また、サインシャンド、オユートルゴイ等の鉱山事業による新しい都市の建設、ナライハ区への諸大学のキャンパス移転による都市人口の集中緩和などの対策が成功すれば、ウランバートル市内の地価が安定するでしょう。
結論としては、予測しがたい様々な要因が存在するが、モンゴルに流入する投資資金の増加に伴う国民の平均所得の向上、また、依然都市人口の6割がゲルに住んでいるというマンション購入の実質的な需要などを考慮すると、住宅価格はここ数年緩やかに上昇し続ける可能性が高いと思われます。